名作文学
今日は、古井由吉『雪の下の蟹』を紹介します。
「師走中旬、一夜極めて、肩寒く、足の凍ゆる時、股々として雷の轟くを聞けば、
『もう、お正月の音がするよ。』と母は添寝の児を慰むるなり。
さるほどに寒威一層加へ、夜は明くれども日光を見ず、淡墨に染まれる明窓の障子を開けば賠雲漠々として、灰色の布は一天を包めり。
果せる哉、其夕より罪々として降積む雪は、一夜にして七八寸、乃至一尺に余るを常とす」(明治38年、泉鏡花「北国空」)。
・・・ここで「お正月の音」がといわれているのは、いわゆる雪雷。
この辺の方言で「飾起こし」と呼ばれているものです。
たしかにこの雷鳴とともに、日本海では盛んに獅がとれはじめ、子どもたちは手を打ってはやしたてたものです。
「天にゃ灰立つ下に雪や降る」
「天にゃ灰立つ下に雪や降る」
(金沢のわらべ歌)。